株式会社Soerute

介護の現場で、安心と簡単を。

今回は、在宅福祉サービスと介護施設運営を手がける(株)SOERUTEの代表取締役・山上剛史(やまがみたけし)さんにお話を伺いました。IT技術への知見が深く、ヘルスケア関連のソフト開発ではアドバイザーも勤める山上さん。
クイックハイジンターミナル(以後、QHT)が販売されて1か月、という早い段階で導入された経緯や、実際の使用感についてお聞きしました。

Q,導入しようと考えた経緯は?

代表取締役 山上剛史さん

(株)SOERUTEは、訪問看護・訪問介護・居住介護支援を中心とした事業から立ち上げました。
その後、知人から話をもちかけられたことがきっかけで、グループホームと小規模多機能の施設運営に乗り出すことにしまして。
運営が始まり「これから利用者さんとの信頼を深めていく」という段階で、コロナウイルスによる緊急事態宣言が発令されました。
ここで感染者を出してはいけない。」という気持ちが強くて。
危機感を感じていたところに、QHTのお話をいただいた次第です。 

従来の体温計では、部屋の中に入ってから測っていただく形になるので、何かあった時に対応が遅れてしまうんですよね。
でもタブレット型であれば、入り口ですぐ検温ができるので水際対策になります。 

 他の機種もある中でQHTを選んだのは、正確な検温ができる上に日本製のソフトウェアだという点が信頼できると感じたからです。
利用者さんやご家族、職員の安心を第一に考え、購入を決めました。 

最初は、本当に正確な温度が表示されるのか少し疑っていまして。
試しにホットの缶コーヒーを頬に当ててみたら、ちゃんと「40℃」の表示が出ましたよ(笑)

Q,QHTを利用するメリットは何だと思いますか?

簡単にすぐ測ることができるので、利用者さんと職員の負担が減らせる点ですね。 

従来の体温計では、一人一人が脇に挟んで測る必要がありました。
体温が表示されるまでに時間がかかるのはもちろん、測定の前後には「体温計を渡す」「消毒する」といった職員の手間がかかります。 

施設入り口の様子

QHTを導入してからは、時間をかけず、簡単に体温が測れるようになりました。
高齢者の方にとっては、「体温計で測る」という行動は、こちらが思っているよりも何倍も大変なことなんですよね。
体の不自由な方や、認知症の利用者さんもいらっしゃいますし。 
簡単な指示ですみ、職員がサポートする手間もかからないので、マンパワーを減らすことができるという点もメリットですね。

Q,導入してからの様子はどうでしたか?見たことのない機械が急に置かれていたら、戸惑う方もいるのではと思うのですが……。 

人って、そもそも新しいものが好きですよね(笑)
ですので、そういった抵抗は全くなかったようです。

使い方も簡単で、「線の上に立って、顔をうつす。」というだけですし。
「ここに立ってください」というシールを貼って、目安にしていますよ。 

特に、小規模多機能(*)の利用者さんは、それぞれ施設に来る曜日や頻度が違うんです。
住居型の介護施設より出入りが激しくて、検温する回数が増える分、簡略化できるのは大きいなと思いました。

張り紙の様子

利用者さんだけではなくて、ドクターも外から訪問にきますしね。
「お!測れた測れた。」なんて言ったりして、結構楽しんで使っていましたよ(笑)
コンセントを入れるだけで使えるので、職員に向けて研修や説明の場もいりませんでした。
張り紙をしただけです! 

*「小規模多機能」とは、デイサービスのように施設に通うことを中心として、短期間の宿泊、利用者さんの自宅への訪問を組み合わせたサービスです。

Q,先ほど「新しいもの」と仰っていましたが、介護の現場でもIT機器は大事になってくるのでしょうか?

『2025年問題』というのを聞いたことはあるでしょうか?
「第1次ベビーブーム」で生まれた団塊の世代が、75歳以上の後期高齢者になるのが、2025年頃なんです。
病院や施設の空きがなくなる、という問題が出てきます。
例えば費用の安い特別養護老人ホームだと、今でも利用するまでに何十人も待たなくてはいけない状態なんです。
今はまだ病院や施設で過ごすのが主流ですが、だんだんと追いつかなくなることは目に見えています。 

もう一つの問題は金銭面。
僕も正直、自分の親の介護が始まってから具体的な数字を知ったんですが、介護は想像している以上の金額が必要です。
施設に入ると、10年で3000万、1年で300万円かかると言われています。
在宅介護だとしても月に約8万円は必要。
さらに、在宅での介護は1日中時間が拘束されるので「介護しながら働く」なんて余裕もありません。 

 育児にかかるお金は計算していても、その後の介護まで計画している人って、正直少ないですよね。
もちろんある程度の貯金がある方なら問題ないかもしれませんが、全ての人がそうではない。
ますます「在宅で介護する、最後を看取る」方向にシフトしていくはずです。

でも、それに耐えられるだけの、在宅介護の時代を支える基盤がまだ全然できていない 

今までと一緒ではダメだと痛感しました。
「じゃあ新しい方法が必要だ」と考えた時に、IT化を進めていくというのは必然だなと。 

 QHTのような最新機器の活用は、高齢者の方や周りで支える人たちの助けになるという点で、介護業界には欠かせないと考えています。 

今回導入したのも、省人化と安心を買ったという面が大きいですし。 

 後は、ソフト開発を行う(株)Moffさんと共同で、リハビリ訓練のためのリストバンドを開発するという事業に携わりました。
データとして結果が出るので、説明だけよりも効果が感じられるというメリットもあります。 

 例えば今回の感染症のような非常事態があったとしたら、病院でのリハビリは進みません。
ほんの少しの期間リハビリをしないだけでも、高齢者の方の筋肉は落ちて、すぐに立てなくなってしまいます。 

 IT化・AI化を取り入れて、病院頼みでなくても自立支援ができる方法を日々模索しています。

 

Point
・すぐに検温できるので、水際対策として有効
・信頼できる機能性(正確な検温・日本製のソフトウェア)
・省人化が進む介護業界では、とても役立つ

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(株)SOERUTEの小規模多機能では、「自力本願、あるがままに自分らしく生きる」ためのお手伝いをすることを目的としているそうです。
「IT化・AI化を進めていくことで、もっと高齢者の方の自由に繋げたい」という想いがひしひしと伝わる内容でした。
QHTの導入も含めたIT機器の活用によって、人だからこそできるサービスにもっと時間をかけることができるのだな、と感じた次第です。    

改めて山上さんご自身についてお伺いすると、「前職で航空自衛隊の幹部として活躍していたが、家族の介護を理由に退官。在宅福祉という全く新しい分野に踏み出した。」というご経歴をお持ちで、大変驚きました。 

異業種に挑戦するだけに留まらず、現在「再生医療分野」にも関わっているそうです。 

今までになかった在宅福祉を目指し、新しい技術や他企業を巻き込みながら奮闘されている姿に大変刺激を受けました。 

お忙しい中、丁寧にお答えいただきありがとうございました!    

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[フリーライター櫛田真悠子] 

執筆・企画・材・撮影を担当。 

主にビジネス・教育・旅行・音楽・ライフスタイル分野の記事執筆、インタビュー取材を専門に活動中。